【20代・女性】上顎両側犬歯埋伏を伴う叢生・正中不一致の改善を目的とした症例解説
「歯並びのガタガタが気になる」「上下の歯がしっかり噛み合っていない」「笑った時の歯の見え方が気になる」とお悩みではありませんか?
本記事では、上顎両側の犬歯埋伏という比較的珍しい所見を伴う症例について、精密検査結果(セファロ分析・グラモンズ分析)をもとに、表側ワイヤー矯正とアンカースクリューを用いた咬合改善アプローチを解説します。
目次
- 初診時の主訴と患者様のお悩み
- 精密検査およびレントゲン・セファロ分析結果
- 診断結果と改善すべき問題点(Problem List)
- 治療計画(PLAN)とアプローチ
- 治療に伴うメリット・リスク・注意点
目次
1. 初診時の主訴と患者様のお悩み
患者様は「歯並びのガタガタ(叢生)」「上下の歯が噛んでいない」「笑った時の歯の見え方」を主訴に来院されました。
1年以上前から歯並びが気になり始めたとのことで、口呼吸や食いしばりの習慣、よく鼻が詰まるといった口腔機能面の特徴もお持ちでした。
2. 精密検査およびレントゲン・セファロ分析結果
治療計画を立案するため、顔貌写真、口内写真、パノラマレントゲン、および側方・正面セファロ(頭蓋測定)撮影を行いました。
| 項目 | 分析・測定結果 |
|---|---|
| 患者情報 | 20代・女性 |
| 骨格タイプ | Skeletal Class I(骨格的な上下顎の前後関係は良好)、High Angle(過分散顔面パターン) |
| 噛み合わせ(咬合) | 右Angle ClassI・左Angle ClassI、正中不一致、上顎両側7シザースバイト |
| 顔面・軟組織 | 側貌はストレート、上唇・下唇ともに標準的な位置、ナゾラビアルアングルが標準より小さめ |
| 顎骨の状態 | 下顎骨の右側方偏位 |
| 特記すべき所見 | 上顎両側犬歯埋伏 |
| 軟組織所見 | 頬粘膜に歯の圧痕、低位舌 |
| 習癖・口腔機能 | 口呼吸、鼻閉傾向、食いしばり、開閉口時の顎の偏位、左側の顎関節クリック音 |
📊 セファロ分析データ要約
骨格的な前後関係を示すANB(1.8°)はほぼ標準値でSkeletal Class Iに一致しますが、上下顎の前後的位置(SNA・SNB)はいずれも平均よりやや後退した値を示しており、歯槽性の特徴が強い症例です。
- SNA: 74.8°(標準81.08° ⇒ 上顎がやや後退)
- SNB: 73.0°(標準79.17° ⇒ 下顎もやや後退)
- FMA: 31.3°(過分散型の顔面パターン)
- Interincisal Angle: 135.1°(前歯間角度が直立気味)
- U1 to FH: 104.5°(上顎切歯が後方に傾斜)
- FMIA: 59.6°(下顎前歯が上顔面に対して前傾)
- Upper molar to PtV: 10.5mm(標準21.1mm ⇒ 上顎臼歯がかなり後方に位置)
- Overjet: 4.1mm(標準よりやや大きめ)
- Nasolabial angle: 73.7°(標準95° ⇒ 唇が前方に突き出た状態)
上顎臼歯の後方位置や上顎切歯の後方傾斜は、犬歯埋伏に伴うスペース不足や歯列全体の後退傾向を反映していると考えられます。
📊 グラモンズ分析(正面セファロ)
- Menton deviation: 2.5mm(下顎オトガイ部が右方向に偏位、下顎骨の右方偏位と一致)
- 上顎歯列正中偏位: 1.2mm(右方向)
- 下顎歯列正中偏位: 0.1mm(ほぼ一致)
- Ag angle左右差: 5.2°(右126.1°/左120.9°、下顎骨の非対称傾向)
- 咬合平面のCanting: 0.5°(軽度)

3. 診断結果と改善すべき問題点(Problem List)
分析の結果、本症例の主な課題は以下の項目に整理されました。
- 叢生: 顎のスペース不足による歯列の乱れ。
- 正中不一致: 顔面正中に対して上顎正中が右偏。
- 顎骨の偏位: 下顎骨の右側方偏位。
- 上顎両側犬歯埋伏: 上顎の犬歯が歯肉内に埋まり萌出していない状態。
- 上顎両側7シザースバイト: 上顎・下顎の第二大臼歯(7番)における咬み合わせの不調和。
4. 治療計画(PLAN)とアプローチ
上顎両側犬歯埋伏という特殊な所見を踏まえ、咬合を優先して歯を配列する方針のもと、表側ワイヤー矯正とアンカースクリューを用いた治療計画を立案しました。
【使用装置・治療アプローチ】
- 主装置: 表側ワイヤー矯正
- 補助装置: アンカースクリュー、リテーナー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 抜歯部位 | 乳犬歯(C)×2本、第三大臼歯(8番・親知らず)×2本 |
| 想定治療期間 | 2〜3年 |
| 保定期間 | 2年以上 |
| 特記事項 | 右上B(乳側切歯)は治療中に脱落する可能性があり、右上2(側切歯)は治療後に補綴が必要となる見込みです |

5. 治療に伴うメリット・リスク・注意点
💡 治療による主なメリット
- 叢生(ガタガタ)の解消による見た目の改善
- 正中不一致の改善
⚠️ 主なリスク・デメリット(説明と同意)
- 埋伏歯への対応: 上顎両側の犬歯埋伏があるため、牽引など通常より時間を要する処置が必要になる場合があります。
- 抜歯に伴う変化: 乳犬歯・親知らずの抜歯を行うため、スペースの管理が必要です。
- 顎骨の偏位の残存可能性: 症例の程度によっては、下顎骨の偏位が完全には改善しきれない場合があります。
- 歯肉退縮・歯根吸収: 歯を移動させる過程で、歯茎が下がったり歯の根がわずかに短くなるリスクがあります。
- 歯髄壊死・顎関節症状: 噛み合わせの変化に伴い、一時的な違和感や顎の痛みが生じる場合があります。
- 補綴の必要性: 右上2番は治療後に補綴(人工歯冠など)による対応が必要となる見込みです。
- 保定の重要性: 治療後の後戻りを防ぐため、リテーナーの規定時間通りの着用が不可欠です。
品川矯正歯科からのメッセージ
上顎両側犬歯埋伏のような特殊な所見がある場合、通常の叢生治療に加えて埋伏歯への個別対応が必要になります。精密検査で骨格・歯列・埋伏歯の状態を丁寧に把握したうえで、咬合を優先した無理のない治療計画をご提案いたします。
歯並びや噛み合わせで気になる方は、ぜひ一度当院の無料カウンセリングにお越しください。