当院について BLOG
ブログ
Blog

【50代・女性】マウスピース矯正で出っ歯・開咬(前歯が噛み合わない)の改善を目的とした症例解説

「昔矯正をしたのに、また歯並びが気になってきた」「前歯が噛み合わず、麺類などが噛み切りにくい」「口元の突出感が気になる」とお悩みではありませんか?

本記事では、当院の患者様の精密検査結果(セファロ分析・グラモンズ分析)をもとに、マウスピース型矯正装置アライナー)を用いた咬合改善アプローチを解説します。


目次

  1. 初診時の主訴と患者様のお悩み
  2. 精密検査およびレントゲン・セファロ分析結果
  3. 診断結果と改善すべき問題点(Problem List)
  4. 治療計画(PLAN)とアプローチ
  5. 治療に伴うメリット・リスク・注意点

1. 初診時の主訴と患者様のお悩み

患者様は「出っ歯」および「上下の歯が噛んでいない」ことを主訴に来院されました。
1986年頃に一度矯正治療を経験されていますが、近年になって歯並び・噛み合わせが再び気になり始めたとのことです。日頃から口をよく開けている、マスク着用後に口呼吸が増えたといった口腔機能面の癖もお持ちで、低位舌・舌突出癖も認められました。

見た目の変化を抑えられるマウスピース矯正(アライナー治療)を希望されています。


2. 精密検査およびレントゲン・セファロ分析結果

治療計画を立案するため、顔貌写真、口内写真、パノラマレントゲン、および側方・正面セファロ(頭蓋測定)撮影を行いました。

項目分析・測定結果
患者情報50代・女性
骨格タイプSkeletal Class Ⅰ(骨格的な上下顎関係は標準範囲)、High angle(過分散顔面パターン/Dolicho facial)
噛み合わせ(咬合)Angle Class Ⅲ(左右とも)、Open bite(開咬)、大きなオーバージェット
顔面・軟組織側貌はストレート、口元(上下唇)の突出感、ナゾラビアルアングルが標準より小さめ、咬合平面が左下がりに傾斜、オトガイの緊張
習癖・口腔機能低位舌、舌突出癖、口を開けている時間が長い、鼻呼吸(マスク着用後は口呼吸が増加)

📊 セファロ分析データ要約

  • ANB Angle: 2.6°(標準2.46° ⇒ 骨格的には上下顎のバランスは概ね標準範囲)
  • SNA/SNB: 74.6°/72.0°(いずれも標準よりやや後退。上下顎とも後退傾向にありながら前後的バランス自体は保たれている)
  • FMA: 41.7°(標準25°に対して大幅に大きく、過分散型=下顎が下方に開いた高角傾向の顔面パターン)
  • Interincisal Angle: 115.4°(前歯間角度が標準128°より小さく、上下前歯が前方に傾斜)
  • U1 to A-pog: 12.3mm(標準6.2mmに対し、上顎前歯が大きく前方に突出)
  • FMIA: 50.0°(標準65°より小さく、下顎前歯が上顔面に対して前傾)
  • L1 to A-pog: 8.1mm(標準3mmに対し、下顎前歯も前方に突出)
  • Upper molar to PtV: 13.6mm(標準21.1mmより小さく、上顎臼歯がやや後方に位置)
  • Overjet/Overbite: 4.2mm/−0.1mm(オーバージェットは標準より大きく、オーバーバイトはマイナス=前歯部が開咬)
  • Nasolabial angle: 78.8°(標準95°より小さく、上唇が前方に突出)
  • Lower lip to E-plane: 3.0mm(標準0mmより前方位で、下唇の突出も認められる)

📊 グラモンズ分析(正面セファロ)

  • Menton deviation: 0.9mm(オトガイ部にわずかな側方偏位)
  • 上顎歯列正中偏位: 0.1mm
  • 下顎歯列正中偏位: 1.5mm
  • 咬合平面のCanting(Occlusal plane): 1.7°
  • Inter-Antegonial planeのCanting: 1.4°
すきっ歯
歯の間
品川
矯正認定医

3. 診断結果と改善すべき問題点(Problem List)

分析の結果、本症例の主な課題は以下の3点に整理されました。

  1. 空隙歯列: 上下顎ともに歯と歯の間にすき間がみられる状態。
  2. Open bite(開咬): 奥歯は接触していても前歯部が噛み合わず、隙間が生じている状態。
  3. 臼歯関係の不調和: 左右ともAngle Class Ⅲの咬み合わせとなっている。

これらの背景には、低位舌・舌突出癖・長時間の開口といった口腔機能の癖が関与している可能性があります。


4. 治療計画(PLAN)とアプローチ

患者様のご希望である「マウスピース型矯正装置(アライナー)」を主装置とし、歯の移動を補助する装置を組み合わせた計画を立案しました。

【使用装置・治療アプローチ】

  • 主装置: アライナー(マウスピース型矯正装置)
  • 補助装置: 顎間ゴム(Elastics)、表側ワイヤー、アンカースクリュー(TAD)、リテーナー
項目内容
抜歯部位原則非抜歯で開始。口元の変化など経過を見ながら、必要に応じて抜歯を検討する場合あり
想定治療期間1〜3年
保定期間2年以上(リテーナー装着)
歯並び
マウスピース矯正

5. 治療に伴うメリット・リスク・注意点

💡 治療による主なメリット

  • 空隙歯列(すきっ歯)の解消
  • 開咬(Open bite)の改善による噛み合わせ機能の向上
  • 臼歯関係の不調和の改善

⚠️ 主なリスク・デメリット(説明と同意)

  • 口元の変化: 前歯の後退・傾斜の改善に伴い、口元の見え方が変化します。
  • 臼歯関係・開咬の残存可能性: 症例の程度や癖の改善状況によっては、完全には改善しきれない場合があります。
  • 歯肉退縮・歯根吸収: 歯を移動させる過程で、歯茎が下がったり歯の根がわずかに短くなるリスクがあります。
  • 歯髄壊死・顎関節症状: 噛み合わせの変化に伴い、一時的な違和感や顎の痛みが生じる場合があります。
  • 保定の重要性: 低位舌・舌突出癖などの機能的な要因が残っている場合、後戻りのリスクが高くなるため、リテーナーの規定時間通りの着用と癖の改善が不可欠です。

品川矯正歯科からのメッセージ

一度矯正治療を経験された方でも、加齢や日頃の癖(舌の位置、口呼吸など)によって歯並び・噛み合わせが変化することがあります。今回のケースのように開咬や臼歯関係の不調和がある場合、精密検査で骨格・歯列・機能面を丁寧に把握したうえで、マウスピース矯正でも無理のない治療計画をご提案いたします。

歯並びや噛み合わせで気になる方は、ぜひ一度当院の無料カウンセリングにお越しください。

監修歯科医師
山口祐希
日本矯正歯科学会 認定医

略歴
平成25年3月 鶴見大学歯学部卒業
平成25年3月 歯科医師免許取得(歯科医籍番号第172108号)
平成26年4月 鶴見大学歯学部 歯科矯正学講座入局 臨床専科生
平成27年4月 鶴見大学大学院歯学研究科(矯正学講座)入学
平成31年3月 鶴見大学大学院歯学研究科(矯正学講座)修了
平成31年3月 学位取得(博士(歯学))
平成31年4月~令和2年3月 鶴見大学歯学部附属病院 臨床助手(矯正科)
令和1年10月 日本矯正歯科学会 認定医取得
令和2年4月~ 常盤矯正歯科、多数の病院勤務(フリーランス)
令和7年11月 品川矯正歯科 開業

Back