歯肉移植と矯正治療の関係
目次
はじめに
矯正治療を検討している方、あるいはすでに治療中の方から
「歯ぐきが下がることはありますか?」
「歯肉移植って矯正と関係あるんですか?」
という質問を受けることがあります。
結論から言うと、
歯肉移植と矯正治療は、場合によっては非常に密接な関係があります。
この記事では、
- 歯肉退縮とは何か
- なぜ矯正治療で歯ぐきが下がることがあるのか
- 歯肉移植とはどんな治療か
- 矯正治療の「前」「途中」「後」で歯肉移植をどう考えるか
について、できるだけわかりやすく、かつ専門的に解説していきます。
歯肉退縮(しにくたいしゅく)とは?

歯肉退縮とは、歯ぐきが下がり、歯の根元(歯根)が露出してしまう状態を指します。
歯肉退縮による影響
歯ぐきが下がることで、以下のような問題が起こります。

特に前歯部では、審美面への影響が大きいため、矯正治療中・治療後に気になる方も少なくありません。
なぜ矯正治療で歯肉退縮が起こることがあるのか
矯正治療そのものが歯肉退縮を必ず引き起こすわけではありません。
しかし、特定の条件が重なると、歯肉退縮のリスクが高まることがあります。
① 歯槽骨の範囲を超えた歯の移動

歯は「歯槽骨」という骨の中に支えられています。
矯正治療で歯を外側(特に唇側)へ大きく移動すると、
- 歯は動いた
- しかし骨の厚みが足りない
という状態になることがあります。
その結果、歯を覆う骨や歯ぐきが薄くなり、歯肉退縮が起こりやすくなります。
② もともと歯肉が薄い(薄い歯肉タイプ)
歯ぐきには個人差があり、
- 厚くて丈夫なタイプ
- 薄くて繊細なタイプ
があります。
もともと歯肉が薄い方は、矯正治療による影響を受けやすいため、特に注意が必要です。
③ 強すぎるブラッシング

矯正治療中は装置が入ることで、清掃が難しくなります。
その結果、
- ゴシゴシ強く磨く
- 硬い歯ブラシを使う
などにより、歯肉退縮を助長してしまうケースもあります。
歯肉移植とはどんな治療?

歯肉移植とは、歯ぐきを増やすための外科処置です。
主に以下の目的で行われます。
- 歯肉退縮の進行を防ぐ
- 露出した歯根を覆う
- 歯ぐきの厚みを増やし、安定させる
代表的な歯肉移植の方法
① 遊離歯肉移植(FGG)
上あごの内側などから歯肉を採取し、移植する方法です。
- 主目的:歯肉の「幅」を増やす
- 色調がやや異なることがある
② 結合組織移植(CTG)
歯肉の内側にある結合組織のみを採取し、歯ぐきの下に移植します。
- 審美性が高い
- 矯正治療と併用されることが多い
前歯部では、結合組織移植が選択されるケースが多いのが特徴です。
矯正治療と歯肉移植のタイミング

歯肉移植は「いつ行うか」が非常に重要です。
① 矯正治療「前」に歯肉移植を行うケース
以下のような場合、矯正前に歯肉移植を検討します。
- すでに著しい歯肉退縮がある
- 歯肉が極端に薄い
- 矯正で歯を唇側へ動かす予定がある
事前に歯ぐきを補強しておくことで、矯正中のリスクを下げることができます。
② 矯正治療「途中」に歯肉移植を行うケース
矯正治療中に、
- 歯肉退縮が進行してきた
- 清掃状態を改善しても改善が乏しい
といった場合、治療途中で歯肉移植を行うこともあります。
ただし、
- 矯正力
- 装置の状態
などを慎重に調整する必要があるため、矯正医と歯周外科の連携が重要です。
③ 矯正治療「後」に歯肉移植を行うケース
もっとも多いのが、矯正治療終了後に歯肉移植を行うケースです。
- 歯並びを整えた後
- 歯の位置が安定した状態
で歯肉移植を行うことで、
審美的にも機能的にも安定した結果を得やすくなります。
歯肉移植をしても、歯肉は完全に元に戻る?

患者さんからよくある質問のひとつです。
結論としては、
すべてのケースで完全に元通りになるわけではありません。
- 退縮の程度
- 骨の状態
- 術後のケア
によって結果は異なります。
ただし、
- これ以上下がるのを防ぐ
- 清掃しやすい環境を作る
という点では、非常に有効な治療です。
矯正治療を安全に行うために大切なこと
歯肉移植が必要かどうかは、すべての方に当てはまるわけではありません。
重要なのは、
- 治療前の正確な診断
- 歯槽骨と歯肉の評価
- 長期的な安定性を考えた治療計画
です。
矯正治療は「歯を並べる」ことが目的ではなく、
歯・歯ぐき・骨を含めた口腔全体の健康を守る治療であるべきです。
まとめ
- 矯正治療と歯肉移植は、場合によって密接に関係する
- 歯肉退縮のリスクは事前評価で予測できることが多い
- 歯肉移植は、矯正治療の安全性と安定性を高める選択肢のひとつ
- タイミングの判断が非常に重要
矯正治療を検討している方は、
歯並びだけでなく「歯ぐきの状態」も含めて相談できる医院を選ぶことが大切です。