矯正治療と歯周病の深い関係
「歯周病があると矯正治療はできませんか?」
「矯正をすると歯周病が進むと聞いて不安です」
矯正相談(カウンセリング)の際、このような質問を受けることは少なくありません。
確かに矯正治療と歯周病は密接な関係があり、正しい理解がないまま治療を進めるとトラブルにつながることもあります。一方で、適切に行われた矯正治療は歯周病の予防・改善に大きく貢献することも事実です。

本記事では、
- 歯周病とはどのような病気か
- 矯正治療が歯周病に与える影響
- 歯周病がある場合の矯正治療の注意点
- 矯正が歯周病予防につながる理由
について、矯正専門医の視点から詳しく解説します。
目次
歯周病とは?矯正治療との関係を理解するために

歯周病とは、歯を支える歯周組織(歯肉・歯槽骨)が破壊されていく慢性疾患です。
初期段階では歯肉の腫れや出血程度ですが、進行すると歯槽骨が吸収され、最終的には歯が動揺・脱落してしまいます。
重要なのは、歯周病は自覚症状が乏しいまま進行するという点です。
そのため「特に問題ない」と思っていても、実は中等度以上の歯周病が進行しているケースも珍しくありません。
矯正治療では歯に力を加えて歯槽骨の中を移動させるため、歯周組織の健康状態が治療の安全性と結果を大きく左右します。
矯正治療は歯周病を悪化させるのか?

結論から言うと、
管理不十分な状態で行う矯正治療は、歯周病を悪化させる可能性があります。
その理由は主に以下の3点です。
① 矯正装置による清掃性の低下
といった問題が起こりやすくなります。
プラークは歯周病の最大の原因であり、清掃不良が続くと歯肉炎→歯周炎へ進行します。
② 歯周病がある歯は移動に弱い
歯周病によって歯槽骨が減少している歯は、
健康な歯に比べて矯正力に対する耐性が低い状態です。
そのため、
といったリスクが高まります。
③ 不適切な矯正力によるダメージ
歯周病があるにもかかわらず、
通常と同じ矯正力をかけてしまうと、歯周組織への負担が過剰になります。
特に成人矯正では、「歯が動く=安全」ではないという点を理解することが重要です。
歯周病があっても矯正治療はできる?
結論としては、
歯周病があっても、適切な管理下であれば矯正治療は可能です。
ただし、以下の条件を満たす必要があります。
● 歯周病のコントロールができていること

- 歯肉の炎症が落ち着いている
- 出血・腫脹が改善している
- プラークコントロールが良好
これらが確認できて初めて、安全な矯正治療が可能になります。
● 歯周組織の状態を正確に評価していること

矯正治療前には、
などを詳細に評価する必要があります。
「歯並びだけを見る矯正」では不十分であり、歯周組織まで含めた総合診断が不可欠です。
矯正治療が歯周病予防・改善につながる理由
一方で、適切に行われた矯正治療は、歯周病の予防・改善に大きく貢献します。
① 歯並びが整うことで清掃性が向上する

歯列不正があると、
といった状態になり、歯ブラシやフロスが届きにくくなります。
矯正によって歯並びが整うことで、
② 咬合(かみ合わせ)の改善
不正咬合は、
- 特定の歯への過剰な負担
- 歯周組織への慢性的なストレス
を引き起こします。
矯正治療により咬合が安定すると、
歯周組織への力のバランスが改善し、長期的な歯の保存につながります。
③ 将来的な歯の喪失リスクを下げる

歯周病は日本人が歯を失う最大の原因です。
矯正治療は見た目の改善だけでなく、歯を長く残すための予防医療としての側面も持っています。
歯周病リスクがある方の矯正治療で特に大切なこと
歯周病リスクがある方が矯正治療を受ける際には、以下が非常に重要です。
- 矯正専門医による診断
- 歯周病治療との並行管理
- 定期的なプロフェッショナルケア
- 適切にコントロールされた矯正力
特に成人矯正では、「どこで治療を受けるか」が結果に大きく影響します。
まとめ|矯正と歯周病は「対立」ではなく「連携」

矯正治療と歯周病は、
「矯正をすると歯周病が悪くなる」という単純な関係ではありません。
- 管理不足 → リスク
- 適切な診断と管理 → 予防・改善
この違いが、治療結果を大きく左右します。
歯並びと歯周組織の健康を両立させることが、
生涯にわたって自分の歯を守るための最善の選択です。